GEAIM

2011 年 7 月に株式会社クラスト事業譲渡された日本のゲーミングデバイスブランド『DHARMA POINT』の製品開発やサイト運営を担当する梅村 匡明氏にブランド立ち上げや新展開について聞いてきました(前編はこちらから)。

後編ではゲーミングデバイスメーカーがなぜこうしないのだろうという事や、実際はどうなのだろうということを中心とした質問になります。

Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0 ライクなマウスを作らなかった理由

ゲーマーからするとなぜ各メーカーは Microsoft IntelliMouse Explorer 3.0 のパワーアップ版的なものを作って出さないんだという意見が少なからずあると思うんですよ。IE3.0 の形状は良いけど、実際のところポーリングレートやセンサー性能は、最新のゲーミングマウスと比較すると劣っているのは間違いないと。ではなぜ形状が IE3.0 でスペックを上げたようなものを出さないのでしょうか? 想像では形状に特許があって使えないとかそういう事もあるのかと思っているのですが。

梅村: IE3.0 みたいなものを出さなかったのは、どうせ作るなら違うものをやろうということですね。軽量なマウスは当時ほとんどなかったのでそれをやろうと思いました。

IE3.0 って、発売当初は 7,000 円以上したマイクロソフトのフラッグシップモデルなんです。大量に量産する事で徐々に価格が下がって現在の価格になっているんです。ですから、新しいものを現在の価格で少数ロットでやろうとするとメモリとかマイコンの性能を下げて価格を落とすということになるんですよね。

やはり、ゲーミングデバイスを作る人間にとって、IE3.0 的なものを作ろうという結論に達するのは敗北を意味することだと思うんです。他に主張するべきことが無いデバイスブランドということになってしまうわけじゃないですか。主張が無いのであれば、単純に OEM を作らせてくださいと頭を下げるだけのことだと思うんです。

僕らが作ったモノというのは、お客さんの側から見ると求めているものではなかったかもしれないけど、製品選択の幅を広げることになったと思っています。それはもう完全に考え方次第で、どちらが良い、悪いではないと思います。最初に IE3.0 のような製品を出して開発資金を稼いで、それから自分たちが作りたいデバイスを作るという方法もあると思います。ただ当時の僕たちは IE3.0 ライクなマウスを作る事を選択しなかったということです。

自分たちが作りたいマウスを作るという。

梅村: たぶんこれが最初で最後のマウスになるのかなと思ってましたから。最初がダメでも次がある状況ではなかったです。仮に、IE3.0 ライクなマウスを出したとして、出てくる反応として「これ IE3.0 のパクリじゃん」という事がありえますよね。よくわからない新しいブランドがパチモンの IE3.0 を出してきたぞと。

そう考えると確かにリスキーですね。

梅村: ZOWIE GEAR さんは IE3.0 ライクなマウスを出しましたが、彼らは元プロゲーマーと開発してベストと思うマウスを作りましたという触れ込みで作っているから出来ている事だと思うんですよね。

なるほど。そうお聞きするとなぜ単純に IE3.0 的なものを作らないのだろうと思っていましたが、難しい判断ということがわかりますね。

梅村: マウスに重りをつけるという事については全く理解出来ないですね。それが何の意味があるか具体的なメリットを説明している所って全くないんですよね。誰も答えられない機能が搭載されているというのはどういうことなんだろうと。

プレスリリースを出したりする際に特徴を増やしたいために付けているということですよね。実際に有益だと思っている人もいるんでしょうけど、個人的には魅力的なものではないですね。

梅村: 僕らが量販店用の OA マウスで、赤いマウスと黄色いマウスを出しているのと何ら変わりが無いことなんですよね。イメージ的な問題。それをユーザーさんが受け入れているのか、懐疑的なのかというのはよくわからなかったですけど。でも僕らが軽量をコンセプトにマウスを売りに製品を出したら余計なものが付いていないという事で評価されて、良かったのかなと思いました。

軽いし、余計なものもないし。

梅村: SteelSeries さんが LED やウェイトは勝利するためのデバイスとして必要ないという宣言をしていたじゃないですか。それは僕らもそう思っていて同意できる部分でした。言い方はどうかと思いましたけど(笑) でもすごく正しい意見だなと思いますね。考えていくと同じ結論に達するのかもしれないですね。

『DHARMA POINT』の製品には LED ってほとんど付いていないですよね。LED に否定的だったところが、最近の製品には LED を搭載したものが出してきています。『DHARMA POINT』では付けようと思ったりはしませんか?

梅村: 海外のバイヤーさんと話をすると言われますね。なんで LED が付いていないんだと。あとは重りも…。重りの方に関してはもう説明するのも面倒くさいんですよね(笑) LED については付けると熱くなるんですよね。ですから、熱くならなくて消費電力が少なくてというのであればあっても良いとは思っていますよ。

LED を付けてを熱くないようにするにはどうするんでしょう。ガワを厚くするんですか?

梅村: そうです。でもそうすると重くなってしまうのですよね。でも、僕らとしては光らせることを否定しているわけではないですね。先ほどのとおり、熱くなくて消費電力が少なくて重くならないのであればもういくらでも光らせますよ。まぶしいくらいに(笑)

まあ、何を優先するかという事ですね。今後そういうのを付けるという事もあるかもしれませんが、いまはそうなっていないということです。

イベントや大会へのゲーミングデバイスの提供は適切だったのか?

僕はニュースサイトをやっている関係で「どうしたら大会やイベントのスポンサードしてもらえるのでしょうか?」という問い合わせを時々受ける事があります。正直、それぞれかなり常識や意識に差があって、びっくりする問い合わせだと「ちょろっとマウスパッドを賞品として出して貰おうと思っているんですが」とか「なるべく高いのをたくさん出してもらいたいんですよね」というのがあったりとか。以前自分のブログに書いたのですが、ちゃんと提案としてやらないとダメですよということを返信したりしていたんですが。

梅村: さすがに「くれ」とか「大会やりたいんですけど、どうしたらスポンサーになってもらえますか?」と一行だけ書いて名前がないようなものはお断りします。誤解があるといけないのですが基本的にこちらから「デバイスを賞品として出しましょうか?」とか「出させてもらえませんか?」とお願いするということはほとんどなかったですね。

サドンアタックでユーザー大会を初期に企画した人がいたのですが、ちょうど大会の時に公式のサーバーが不調でイベントが延期になってしまったという事があったんです。そこの運営者さんがいる IRC チャンネルにたまたま入っていたので結構がんばっていたのは知っていたのですが、完全にお通夜モードになってしまっていました。せっかくたくさん参加者も集まったのに残念だな、と思ったので主催者の方に「もし良かったら賞品としてデバイスを提供するので、1 度延期してもう一回やってみませんか?」と提案しました。多分、こちらから賞品を出させて頂くというお話をしたのはその時くらいですね。

なんていうんでしょう。個人的な感想ですが、各ゲーミングデバイスブランドが一時期過剰にユーザー大会に賞品を提供している時期があったなと思っているんですね。僕は簡単にもらえるものだと思われると製品価値が下がるから安易に出すのは辞めた方がいいのではと思っていたのですが。

梅村: 僕ら的にはあまり無差別に配っていたということはないんですよ。ダーマポイントに声をかけるともらえるというのがどこかで広まっていたのかも知れないですね。

ええ。なんかこう、言えばもらえるみたいなのがあったように感じていました。

梅村: 僕らの場合は、問い合わせをしてきてくれた主催者の方にお話を聞いて、もしこの日に開催が出来なかったらどうしますか?予備日はもうけてありますか?など、最初の件があったので大会が滞ることなく運営できるよういろいろ質問しています。問い合わせることがある場合は IRC に来て聞いてください、ではなく問い合わせフォームを作っておきましょうとか。一人でやろうとしていませんか?とか。そこで返信が無くなってしまう人もいますし、こちらの意見を聞いて改善して運営されていた方もいました。そこまでやってくれて参加されるみなさんが楽しめるのであれば出さない理由がなかったということです。

  • ※当時のスポンサードに関するガイドライン資料(pdf)
  • ※現在は体勢が変更となっているため、上記のガイドラインを満たしても無条件で協賛を実施するわけではないそうです

実際にはいろいろな基準があったんですね…。

梅村: プレイヤーに関しては韓国で開催された e-Stars に視察にいったんですが、MYM など海外プロチームが来ていて試合をみると彼らはプレイする姿勢が違うと思いましたね。観客に見られることを意識してプレイしているんですね。

Counter-Strike のですね。毎年やっていますね。

梅村: ですね。オフラインで見られることを意識しているところが日本とは違う感じがしましたね。日本だと、普段はゲームの上手い人がいきなり箱の中から取り出されたみたいに萎縮してガチガチになってしまうこともありますので。彼らのようにオフラインでのアピールができるようになるにはやはりプレイ人口が増えてオフラインの機会が増えないと厳しいのかなとも思いますね。

日本ではやはり難しいですかねえ。

梅村: でも、格ゲーではちゃんと出てきているじゃないですか。

あれはカリスマがいたり、わかりやすさや認知度が違うなというのもあると思うんですよね。確かに、何が違うのかは興味がありますね。

梅村: 調べてみると面白そうですね。

ゲーミングデバイスレビューについて思うこと

ユーザーさんのレビューはよく読んだりしますか? ユーザーレビューはどう思いますか? 個人的にサイトでもやっていたりして、上手く説明したり違いを表現したりするのが難しくて苦労しているのですが。

梅村: 読みますよ。なんというか一言で言うと、若い方が多いので背景のデータベースがあまりないのかなと思います。ある程度色々なものを試してそれを元に論ずるということがなかなか出来ていないのかなと思っています。

デバイスでもゲームでもそうだと思いますけど,ゲーマーとして、そのあたりが出来ると非常に良いと思いますね。例えばただ単に「クソゲー」と言われても良くわからないので、「なんでクソゲーなのか」と思うところをはっきりさせるように書くとか。比較してどこが良いとか、この作品は何の影響を受けているのかとか背景をしっかりさせると。でも、あまりそういう動きがないのは残念ですね。

デバイスレビューではないですけど、ゲームだとゲーム批評サイトの『GAME LIFE』さんが最近すごく出来上がってきてると思います。前に掲載されていた「MineCraft」の記事が非常に素晴らしくてダーマポイントサイトでも批評の批評みたいで変な記事でしたけどご紹介させていただいて、『GAME LIFE』さんの記事はすごくよく考えられていますよね。たんなる印象批評を逸脱してきたというか。

そうですね。「GAME LIFE」さんは、すごく良いサイトだなと思います。最近 Twitter のタイムラインを見ていても結構 URL を目にする回数が増えてきています。みなさん、記事が面白いと思っているから記事について発言していると思うんですよね。海外記事を翻訳するだけではなくてオリジナルの記事を作っていたりして独自性のあるサイトで、運営されている方はすごい人だなと思っています。1 度 GEAIM でお話を聞かせてもらうと面白そうだなと思っていますね。

梅村: そうですね。すごく良いと思いますよ。おそらく、運営者の方がゲームに対して、ある程度の基準点を自分の中で持っていて話をしているんじゃないでしょうか。『Edge』というイギリスの素晴らしいゲームマガジンがあるのですがオタクじみたところがなくてレビューも読み物として楽しめるというところに同じ雰囲気を感じますね。ちゃんとゲームの歴史を知識として持っているから記事に安定感がありますよね。

個人的にも結構興味深いと思っていて、どんな方がやっているのかなと思ってプロフィール等を探したのですがサイトには書いてないんですよね。以前にメールを頂いた事があったのを思い出して、ちょうど最近見直してお名前とかハンドルとか思い出したのですが。サイトには掲載されていないので記事では書かない方が良いのかも知れませんけど。

梅村: 謎ですね、どんな方なんでしょうかね? 1 度お話させていただく機会があれば面白いお話が聞けるかと思います。先ほどの話に戻りますけど、言いたいことはやはりレビューというのはやり続けてきた結果で背景の「データベース」が大事ということなんですよね。

デバイスレビューという話とはちょっとズレてきましたが(笑)、ゲームで気になるサイトという感じでしょうか?

梅村: そうですね。気になるゲーム情報サイトですね。

DHARMA POINT の新展開や新製品はどうなる?

ブランドの立ち上げや個人的に気になることを聞いてきましたが、新生ダーマポイントの展開としてはどうでしょうか? 親会社が変わったことにより、展開も変更になったりするのでしょうか?詳しい事は言えないかも知れませんが、新デバイスはの開発は進んでいますか?

梅村: 基本的には変わらないように努めています。これまでどおり、ダーマポイントらしい製品を作っていければと思います。現状の販売は信頼のおける販売店さまで製品を取り扱っていただいて展開していきます。

ちょうど今日、開発中のデバイスを持ってきたんですよ。いくつかあるんですけど。一つ目はワイヤレスヘッドセットですね。機能を絞ってケーブルタイプの代替になるような製品を目指しています。オーディオ IC を変えたり、いろいろいじっていますけど完成に近づいています。家で実験を兼ねて試用しているんですけど、とても便利ですよ。有線だと「飲み物を取りに行ってきます」と言ってミュートしたりしないといけないですけどワイヤレスなのでそのまま会話しながらキッチンに歩いて行ったり(笑)充電式なんですけど電池が無くなってもチャージしながら使用できるのでほぼひっきり無しにつかってます。

これは良さそうですね。個人的にヘッドセットが 3 個くらい連続で断線していて…。コードがない方がそういうことが無くて良いのかなと思っているんですよね。 エレクターみたいなラックにかけてあるんですけど子供がコードを引っ張るんですよね。

梅村: あー、それはきついですね。断線しちゃいますね(笑)。あとはイスのキャスターに巻き込まれるケースですね。

次は、布系のマウスパッドです。ルーペがあるので表面を拡大して見て頂くと面白いと思いますよ。堅い PET 樹脂の繊維でペットボトルに使われているような素材で構成したパッドです。 織りが立体的になっていて、マウスを点で支えるイメージですね。

布パッド
マウスパッドの表面拡大写真。

拡大すると面白いですね。というか暗くてちょっと見にくいですけど(笑) こうやってパッドを見るのは新鮮かな。

梅村: 他のもありますよ。こっちはシリコンのパッドです。

すごく滑りそうですね。シリコンだけど一般的なシリコン製とは違いますね。

梅村: そうですね。さらさらとした感触ですけどよく滑ります。気持ちいい系です。光の反射の仕方が他のパッドとはちょっと違うんですよね。再帰性反射といいまして…

全然わからないです(笑)

梅村: 普通は光を当てると様々な方向に拡散してしまうんですが、この素材は光が入ると屈折反射して入った方向にまた戻っていくんですね。今まで拡散していた光がトラッキングにちょうどいい状態で取捨選択されるイメージですね。ルーペで見ると細かいところが見えるんですけど。

ここが暗すぎて見えない…。でも聞いていると面白そうなマウスパッドですね。

梅村: これは知らない人に試してもらうと滑り心地が良くて最初に必ずニヤッと笑うパッドなんですよね。

布パッド
見えないと言っていたので提供いただいたシリコンパッドの表面写真

これらはいつリリース予定ですか?

梅村: もうすぐ出そうと思っているものです。マウスも来年早々には出せそうかなという感じですね。

※先日公開された 4Gamer.net さんのインタビューでは今後の展開についての詳細を読むことが出来る他、新製品の製品写真を見ることができます。

終わりに

梅村: 本日は色々とお話を聞かせて頂きましてありがとうございました。おつきあいは長いですが、このような形でお話しさせて頂くのは初めてで面白かったです。今後の DP の展開や読者の方に何かメッセージ等がありましたらお願い出来ますでしょうか。

おかげさまで、『ダーマポイント』は新しいスタートを切ることができました。あれから日本でもゲーミングデバイスがとても増えたように思います。それはそれで大変素晴らしいことですが、一方で PC ゲームはオワコンなんて言葉も聞かれます。スマートフォンやセットトップボックスなどゲームプラットフォームがどんどん出てきて日々のニュースを彩っています。

たしかに一見すると PC ゲームは元気がないように見えますが僕らはそう思っていません。むしろハードの価格性能比がさがってきたこれからのほうが面白いことになると思います。

よく考えてみてください。スマートフォンでも PS3 でも XBOX でも結局どのプラットフォームでもゲームをつくっているのは PC です。そして PC ゲーマーがグラボを買う前のワクワク感や性能について友人と話す楽しみ、コミュニティによる MOD のパワーはコンシューマーゲームには無いものです。どうかそんな贅沢な楽しみを知らない他のゲーマーにその楽しみを伝えてください。



梅村さんありがとうございました。カットになると思うのですが、という前提で話していただいていたことが、チェックではそのまま残されたままで結構驚きました。

見せていただいた新製品のプロトタイプはなかなか面白そうなものでした。これからどのように仕上がっていくのか、どんな製品が出てくるのか楽しみです。

DHARMAPOINT プロフィール DHARMAPOINT プロフィール
2007年に始動した日本のゲーミングデバイスブランド。2011年7月からは体勢を一新し再スタート。
http://www.dharmapoint.com/ http://twitter.com/DHARMA_POINT/

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